「仮想的空間」や「仮想的現実」は今日の金融を理解するためのキーワードといえます。そして、今日の金融において大きな支配力を持っているのが“デリバティブズ”です。それを代表しているのが“オプション”です。ところが、その“オプション”をマーケット参加者のほとんどが“相場”(=「キャピタルゲインを得ることを目的に行う“売り買い”」)の対象物としてみなすために事の本質が見えなくなっているように思われます。同時に、オプションそれ自体が高度な理論のベールに包まれていることも本質を見えにくくしているように感じられます。
事は単純なのですが内容はずっと深いのです。
そこで、“マネー”の話題を取り上げたいと思います。
私は“マネー”という言葉を使いますが、それは英語の“money”で日本語の「おカネ」や「貨幣」に相当します。日本人の間で日常語として使われる「おカネ」という言葉もビジネスや経済、学問の世界で使われる「金融」という言葉も英語では“money”(”マネー“)で通じます。経済学にはmonetarism(「マネタリズム」・・貨幣に関係する金融論)がという言葉がありますが、それも”money”から派生した言葉です。さらに、日本では「ファンドマネージャー」と呼ばれる資産運用の専門職の人を英語では”money manager”(マネーマネージャー)と呼びます。
このように、“マネー”(“money”)という言葉は英語の世界では日常語としても専門用語としても広く使われているのです。
多くの人たちは普段の生活で“マネー”とは何かといったことについて思考を巡らすようなことはしないと思います。しかし、改めて“マネー”とは何かと問われると答えに窮するのではないでしょうか。子供に「“おカネ”とは何か。」と訊かれたらどう答えるでしょう。誰もがモノを買うのに“おカネ”が必要なことを知っています。財布の中にある紙幣や硬貨を見せてこれが“おカネ”だといえば子供は理解するかもしれませんが、大人である皆さんはその答えに満足できるでしょうか。
これまで私が“マネー”について過去述べてきたことを思い出して整理してみてください。それはまだまだ十分ではありません。しかし、少なくとも皆さんは今日の経済社会や金融の世界で使われる“マネー”が「財布の中にある紙幣や硬貨」を意味しないことを知っているはずです。
これまで私が述べてきたことから今のところ導き出される結論は、“マネー”はしくみであるということです。それのベースは概念です。だから、銀行がやってきたようにそして現在もやっているように“thin air”(薄い空気)から”おカネ“を生み出すことが可能なのです。